マリンバでの作曲やアレンジ法を公開・解説するシリーズ第2回目。
今回は皆さんよくご存じ「大きな古時計」のマリンバソロアレンジです。
↓前回は2台4人アレンジの「七つの子」でした。
ソロの場合、メロディー、ハーモニー、リズムの全てを一人でこなすわけですから、なかなか大忙しです(笑)。
このアレンジでは、奏法、歌詞に沿った曲想作りやコード付けなど、いろいろな要素がつまってますのでじっくり解説していきたいと思います!
歌詞に沿って展開を考えてみる
曲の依頼を受けるときには多くの場合
- どんな場で演奏するか
- 客層(どんな人たち向けなのか)
- その曲で聴かせたい、見せたいポイントは何か
などが決まっていてそれに合わせた曲作りをしていきます。
このアレンジのお話をいただいた時には
- 幼稚園(保育園)でのコンサート
- マリンバの豊かな音色、響きをよーく聴いてみよう、というシーン
- 知っている曲なので園児たちが一緒に歌う、という可能性も大いにあるので歌っても大丈夫なアレンジで(メロディー等崩したりはしない)
というお話(確か‥)だったので
原曲に忠実にしつつも、音域や曲想の変化もなるべく幅広く、そしてマリンバの奏法も色々取り入れて盛りだくさんな一曲になるよう仕上げてみました。
その上で大変ヒントになったのが「歌詞」。
英語の原詞と若干の違いはあるようですが日本語詞もとってもわかりやすくステキな詞ですね。
おじいさんと共に一生を過ごしてきた時計の100年。
(ちなみに原詞では100年ではなく90年、本当は4番までですが日本語詞は3番がカットされている、とかだったりするようです)
この歌詞をより深く味わえるようなアレンジを意識してみました。
◆1番‥シンプルに
おじいさんと時計の人生のスタートです。
こんな歌詞でした。
まずはこんな感じに。
室内なのでデッドですが、ちょっと広いところで弾くと良く響いて気持ちいいアルペジオ奏法。
前回にも書いたように、「トレモロをしすぎない」。ソロでも同じです。
響きを味わうのに、音を少なく弾く部分はとても重要だと思います。
◆2番‥活気を出してみる
2番ではおじいさん、結婚しましたね。
また新たな人生のスタート、ということでエネルギッシュな感じも出したいので音を増やしています。
マリンバを弾いたことがない人は、一体マリンバ奏者は4本マレットでどんなことができてどんなことができないのか、なかなかわかりにくいかと思いますが、意外と制約が多いです
同時に出せるのは当然4音、片手の2本で届く音程はせいぜい1オクターブ、両手が極端に離れることもできないし、
片手連打も限界があります。
でも制約があるからこそ、マリンバならではの音型を作ることもできるのがとても楽しい部分でもあります。
2番冒頭部分、ちょっとテンポを落とした演奏で弾き方を見てみましょう。
伴奏の音型を右手も一緒に弾いてるのお分かりでしょうか。
譜面はこうなっています。
※マレット番号は左手左側(低音側)から1、2、3、4となります。
基本はピアノのように、上段が右手、下段が左手という見方なのですが、この部分のように右手でも伴奏の音型を手伝うことにより手の動きがスムーズになります。
それに加えて、内声に面白い音型が作れるというのが特徴的です。
マリンバを弾かない人にとってはこういった作りがなかなか想像つかないかと思うので、ぜひ奏者と相談してみるか、一度マリンバを習得してみるといいでしょう
10分くらいで指の皮がむけます(笑)
私は作るときは弾きながら作っていくか、手順を想像しながら作っていくのでたいてい手の動きに無理のない作りになっている‥はず。
ここの部分の特徴としては、左手が低音でベース音を5度上と重ねることで、ちょっとどっしり力強く聴かせる音にしていることです。
エネルギッシュ感でてますかね?
ちなみにこの譜面を試しにピアノで弾いてみると、なんだかへんてこりんな感じになりますよ。
ピアノで作っても全く参考にならないんです。
さていよいよ3番。
◆3番‥祈り
おじいさんとうとう亡くなってしまいます。
一緒に時を刻み続けた時計がそれを知らせてくれる、泣けるシーン。
天国へのぼるおじいさんへの「祈り」の雰囲気で書いてみました。
前半4小節、ベース音はA♭を長く保っています。
スコットランド民謡なんかで、終始バグパイプがルート音を終始伸ばし続けているのがあったりするんですけどそれに近い、ちょっと厳かなイメージ。
後半では一音ずつベース音が下がっていき広がる感じです。
悲しい悲しい3番の「今は もう 動かない」の所は
悲しいコードでひっそりと。
1番から3番まで、ちょうど歌詞からイメージがしやすかったので大きく変化をつけることができました。
コード付けも曲の雰囲気に沿うようにしてみるとより気持ちがこもると思います。
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